お料理

みなさんはお料理しますか?

 

僕は四年前、上京してから少しずつ料理をするようになった。

幸いなことに僕の舌は肥えていない。

「美味しい」と「すごく美味しい」しか感じない僕の舌は実に哀れで、実に優秀だ。

というのも、貧乏学生にとっては馬鹿舌は非常に大きなアドバンテージであり、どんな手抜き料理でも美味しい判定が出るので実に安上がりなのだ。

はじめの頃は本当に、生きていくために必要な栄養素に味付けをしているだけだった。

実にシンプルで、基本的にはもやしや豆腐が並ぶ白を基調とした食卓であった。もやしとお豆腐に関していえば、もはや殿堂入り。やつらには本当に世話になった。

 

お魚を食べたくなったらスーパーでブリを買って照り焼きにしてみたり、ダシをちゃんと取ってお味噌汁を作るようになったのもここ2年ぐらいの話で、全然料理が趣味とか特技とか、そんなレベルではない。

 

ただ言っておきたいのが、僕は料理で失敗したことはない。

確かに今でも具材を切る時に「猫の手!」を意識しているが、カレーの野菜が賢者の石ぐらい硬かったことも、お味噌汁が海みたいに辛かったこともない。

というのも僕は味見をめちゃめちゃするのだ。

味見でおなかいっぱいになるぐらい味見をする。味見のために料理してるの?ってくらい味見をする。娘が出来たら「あじみ」って名付けていいぐらい味見をする。

 

臆病なのだ。

 

大胆な味付けはこわい。

 

僕は味噌も醤油も塩も砂糖も、一撃で料理を殺せるポテンシャルを持っていると思う。

もちろん適量を守ればやつらは料理を引き立てるし、なんなら主役になる。

だから味付けは繊細にするし、何度も味見をする。

臆病な人はきっと料理で失敗したことはないのだろう。

 

 

僕は臆病だ。

 

こういうことが起きるかもしれない、こうなったらどうしよう。そんなことを考えながらなかなか行動に移せない。そんな人間だ。

できれば大胆でありたいし、ポジティブでありたいと常に思っている。

でもまあ料理する時くらい、臆病でもいいのかなあなんて、そんなこと考えながら、今もポトフの味見をしている。

 

おしまい