校長先生からの挨拶です
えー、みなさんが静かになるまで860万5682年と11ヶ月、16日と13時間26分22秒掛かりました。
この長い間、私は待ちました。
気の遠くなるような長い時間です。
みなさんが静かになるまで、私はひたすら待ち続けました。
色んなことがありました。
無意味な戦争に野は荒れ、自分勝手な開発に海は枯れ、かつての美しい地球の姿は今では見る影もありません。
静かになりました。
本当に静かな地球になってしまいました。
みなさんが静かになったというよりは、この地球が静かになってしまいました。
人も減りました。
かつては1億人以上いた日本の人口も今では私と、教頭先生の2人です。
私は今、誰に話しているのでしょう。
この朝礼台に立ち、今こうやって話すことに、果たして意味があるのでしょうか。
私が、みなさんが静かになるのを待っている間にみなさんは天国へと旅立っていきました。
残ったのは私と教頭先生だけです。
みなさん、天国はいいところですか?
美しいところですか?
幸せに溢れていますか?
寂しいです。
私は今、とても寂しいのです。
みなさん、私の気持ちを考えてみてください。
この長い間、私は教頭先生と二人きりです。
二人とも推定860万5700歳前後です。
歳を取りすぎて正確な年齢が分からないので「推定」とさせていただきましたが、推定なんて言葉は縄文杉の樹齢ぐらいでしか聞いたことがありません。
みなさん、帰ってきてください。
静かになどしなくていいから。
校長の話など聞かなくてもいいから。
お願いだから、帰ってきてください。
そして騒いでください。
みなさんの楽しそうな笑顔が、もう一度見たいのです。
それが私の、私の唯一の願いです。
校長の私からのお話は以上です。。。
次は、教頭先生からの挨拶です。
おしまい