鯉のぼり
5月5日。こどもの日。
国民の祝日の中でもかなりの認知度を持つであろうこの日。
ひっそりとGWの中にたたずむこの祝日について、あなたは考えたことがあるだろうか。
祝日法2条によれば、
こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかること
がこの祝日の趣旨であるらしい。
僕は長年疑問に思っていた。
大人(親含め)がこどもの人格を重んじたり、こどもの幸福をはかることなんて当たり前じゃん。あえて祝日にする必要があるか?言っちゃえば毎日がこどもの日であるべきなんだよ。
なんともまあ生意気なクソガキの意見である。
この祝日のおかげで連休が頂けているというのになんという言いぶり。
こどもの日に謝れ!!親にも謝れ!!なんて野次が頭の中に響き渡る。
野次の主に僕は声を大にして言う。「うるせえ!」
僕は今まで、親や大人からこどもの日に盛大に何かをやってもらったことはない気がする。
別に特別な日という認識はないのだ。
ただ僕はそれに対してなんの不満もないし、〇〇をして欲しいなんていう厚かましい欲望を抱いたこともない。
水中で初めて酸素のありがたさに気付くように、本当の意味での親のありがたさに気付くことができたのは、親元を離れてからだったかもしれない。
親元を離れ、一人になって、様々なことを自分でこなしていかなくてはならない状況になった時僕は親が、周りの大人が、今までどれだけ自分に愛を注いでくれていたのか痛いぐらい感じた。
周りの大人たちは僕が一人になっても、独りにはしなかった。
どれだけ辛いことがあっても、寄り添ってくれる大人が僕の周りにはいた。
そういう意味では、本当に毎日がこどもの日だったのかもしれない。
そんなことを考えながら、23歳のこどもの日は東京で一人で過ごした。
東京の空は狭い。
ビルが、電線が、空を埋めている。
そんな空を眺めて、もう五年目の東京だ。
狭い空を気持ちよさそうに泳ぐ鯉のぼりを見つめる。
僕が故郷で見た広い広い空でなくても、この東京の狭い空でも、鯉のぼりは気持ちよさそうに泳いでいる。
そんな鯉のぼりが僕は少しだけうらやましかったし、お前ものびのびやれよ。って言ってくれているような気がした。
5月5日はこどもの日。
これからは、たくさんの愛をくれた大人に感謝する日にしよう。
そう考えると、東京の空が、少し広くなった気がした。